食虫植物は種類ごとに栽培のポイントは違いますが、詳細はそれぞれの種類ごとに解説しましたので、そちらをご覧いただくことにしまして、ここではおおむね共通する、いわば食虫植物栽培の基本とも言えることがらについて解説してみたいと思います。
食虫植物の栽培では、ほとんどの丈夫な種類において、用土を常に湿らせておくことと、湿度を高く保つことがポイントになります。小さな種類を1~2鉢だけ育てるのに、わざわざ水槽や温室などの設備を揃えるのもたいへんですので、ここでは日用品を利用して簡単にできる方法をご紹介してみたいと思います。
鉢の下に植木鉢用の皿を敷いて水を貯めておきます。こうしておくと用土は水を吸い上げ続けますので、常に用土を湿らせておくことができるようになります。これを腰水(こしみず)と言います。
湿地のように湿った用土を好むディオネア(ハエトリソウ)やドロセラ(モウセンゴケ)の栽培に役立ちます。
逆に、用土の通気が重要な種類、ネペンテス(ウツボカズラ)やピンギキュラ(ムシトリスミレ)、セファロタスなどは、十分に注意の上で利用する必要があります。
さらにその上から行楽用のプラコップをかぶせれば簡易温室のできあがりです。小型のモウセンゴケや幼株などは、こうして湿度を保つようにすると手軽に栽培できます。
食虫植物の栽培を楽しむ上での成功の秘訣は、丈夫で育てやすい種類を選ぶことです。食虫植物の中には冷房やミストを必要とする種類もあり、そうした種類を設備なく育てるには特別な専門知識が必要です。
無理して難しい種類に挑戦しても枯らさないのがやっとで、写真にあるような美しい姿は簡単には見せてくれません。ですのでそうした種類は専門家に任せ、すぐに写真よりもきれいな姿をみせてくれる食虫植物をご紹介したいと思います。
ハエトリソウ
ディオネアは丈夫で育てやすい食虫植物です。十分に湿った用土を好むので腰水での栽培も向いています。暑さにも寒さにも強く、いろいろな品種を集める楽しみもあります。
ディオネアの根は長く伸びるので深めの鉢が向いていますが、浅い鉢でも問題なく生育します。用土はミズゴケで問題ありません。
ネペンテス グラシリス
低地性のネペンテスはとても育てやすいのでおすすめです。用土は少し乾かし気味にします。夏の暑さには強いのですが、寒さには弱いので、冬は暖かくしてあげます。弱光に強く、蛍光灯だけでも育てられますが、高い湿度を保ってあげることが大切です。
ネペンテスには排水性の良い用土が向いています。ミズゴケで植える場合には、水を与えすぎないよう注意します。
セファロタス
セファロタスは蛍光灯だけでも良く育ってくれる食虫植物です。やや湿った用土を好みますが、水の与えすぎには注意します。寒さに当てると美しい赤に染まり、たいへん見応えのある姿になります。湿度を高めに保つと大きな袋が付きやすくなります。
セファロタスは様々な用土に対する順応性があります。排水に問題のありそうなイメージのあるミズゴケやピートモスも、乾かし気味に管理すると意外に良く、うまく馴染むと爆発的な勢いで生長します。
さらに詳しいセファロタスの育て方は、こちらがおすすめ
ドロセラは屋外の日照と高い湿度を好む食虫植物です。常に水浸しのような状態の用土を好む湿地性の種類が多く、そのような場合には腰水で管理すると便利です。寒さに強い種類も多いですが、世界中に分布するドロセラは種類によって環境も全く違うため、栽培する種類ごとに環境を整える必要があります。
ホームセンターで良く見かける種類であれば、ドロセラの用土はミズゴケやピートモスで問題ありません。深めの腰水が良いので、鉢はあまり深くないものが良いでしょう。